企業紹介

赤羽工機有限会社

2014年8月26日

赤羽工機有限会社

創業時から息づく3つの理念

中島芳郎社長インタビュー

中村:
会社の経営方針をおきかせいただけますか。

中島社長:
私は県陵(松本県ヶ丘高校)の出身です。卒業してすぐに事業を始めた事もあって、  県陵の3つの理念が企業を経営するにあたっても非常に参考になると思っています。
1つ目は、大道を闊歩せよ
2つ目は、弱音を吐くな
3つ目は、質実剛健であれ
です。
「大道を闊歩せよ」は企業として何をバックボーンにするか、目先の利益に捕らわれるなということです。私たち製造業は、高度成長期はいくらでも仕事がありました。また工作機械も今みたいに何百万もしませんでしたから、製造業として起業するのはわりと簡単でした。
しかし、現在は製造業として起業するのはかなり難しい状況です。私たちの会社は一般には下請けと呼ばれるものです。親会社は海外移転や内製化を進めています。そんな中で私たちみたいな下請け企業が生き残っていくためには何をしないといけないか?個々人の能力を高め、それを会社の力として蓄えていく事が大事だろうと思います。他に求めるのではなく、自分でどこまでできるかが重要だと思います。当社では工作機械の改造や、コンピューターのソフトも社内で行っています。

中村:
マシン用のソフトだけでなく、財務や売上管理などのソフトウェアも内製されているのですか。

中島社長:
そうです。できあいのソフトウェアだと、それぞれのソフトが分かれていてデータの連係がしにくいのです。売上や在庫管理、財務管理など、自社にあったものを内製しています。そうすることで、自社の業務に合った適切な帳票もデータ連係もできるようになっています。
 

内製による知恵の蓄積

新工場の様子
新工場の様子

中村:
自社用のソフトを作られる専門の部署を設けてあるのですか。

中島社長:
うちのような小さな会社ではそのような人員は割けず、残念ながら今は私がやらざるを得ない状況です。

中村:
え!中島社長が自らプログラムされてるんですか。
それはすごいですね。中小企業ではITへの苦手意識が多い中、しかも社長自身が情報化を進められているなんて、珍しいですね。

中島社長:
国内製造業の空洞化や海外との価格競争がますます激しくなってきています。メディアが言っているほど日本の製造業は強くないと思います。これだけ円安が進んでも輸出は為替差益が殆どで数量は増えていません。
国内に残った仕事を取り合うわけですから、社内ノウハウを高め、当たり前のことですがQCDでの競争力をあげる事が大事です。特に私たちみたいな加工業では自動化が避けて通れません。

中村:
内製化いたるきっかけは何かあったのですか。

中島社長:
大手にとある工程の自動機械を発注したのですが、それがなかなか上手く動かなかったのです。それを修理していくうちに結局全部作り直すことになりました。大手が大げさな部品などで作った機械よりも試行錯誤しながらも自社で作った方が安くていいものができた、このことがきっかけですかね。
当然、改造してしまうとメンテナンスは自社持ちになってしまいますが、やっていかないといけません。

中村:
なるほど。ソフトウェア内製や工作機械の改造を社内で行うことで、ノウハウの蓄積を行われているんですね。
 

表層の競争力強化に終わらせない

磨かれたドリルが整然と定置管理
  ◆ 磨かれたドリルが整然と定置管理

中島社長:
私たちみたいな下請け企業が生き残っていくにはどうしたらいいと思われますか?

中村:
最近よくテレビ等でも報道されていますが、自社製品を作って親会社依存を減らしていく方法や、独自の特殊技術で付加価値を高めていくことが必要ではないですか。

中島社長:
世間一般ではそのように言われていますね。しかし自社製品で成功している企業はごくごく一部です。ほとんどの会社は失敗していますし、自社製品に手を出したおかげでつぶれた会社も知っています。
自社製品を作っただけでは十分ではありません。アフターサービスやサポートも必要になってくるのでそう簡単にお勧めできるものではありません。また、昔は手作業による工程が多かったのですが、現在は機械化されています。特殊な技術にしてもそれが必要な分野は限られています。

コンピューターを使いこなせば誰でも出来る時代です。工作機械も何百万と高価なので資金に余裕のある大手が有利です。付加価値もすぐにマネされてしまいます。
さらに、商品も成熟期に入ると親会社は外注を減らして内製化を考えてきます。仕入れる材料も、作る量も、必要な機械の購入費用も私たち下請けが大手にかなうところはありません。コストでしか勝負できないとなると、安い賃金で長時間労働するしかありません。それを避けるために、半歩先を行けるように社内にノウハウを蓄積していっています。
 

独自の自動化の推進

自社で開発した自動ロボット
自社で開発した自動ロボット

中村:
先ほど工場も見学させていただきました。自社で改造された機械があちらこちらにありました。
社長が話されているように自動化が進んでいます。ロボットの動きを見ると、本当に人間と同じにみえました。
素早い動きをしたかと思うと、部品を台座に載せる時はそっと丁寧な動きに変わります。
こういったロボット化も自社製ならではなんですね。また作業員のみなさんも若い方が多いようにみえました。

 

中島社長:
中小企業でロボットを有効活用するため社内で組付けをしている会社はまだ少ないと思います。工場内にもLANケーブルが張り巡らされていますが、それらも社内で行ったものです。
進捗管理もバーコードを利用した自社製プログラムです。自動化も生き残るための施策です。
大量生産のための自動化は簡単です。私たちが目指しているのは、短納期、小ロットに対応したロボット化です。例えて言えば、パートの奥さんたちのようなロボットです。
パートの奥さんたちだと、この仕事が空いたらあの仕事にまわす、みたいに臨機応変に仕事をすることができます。これが理想ですね。

中村:
平成21年に長野県工業技術総合センターとのマシニングセンタの機上位置補正装置の共同開発をおこなわれています。

中島社長:
はい、自社の技術だけでは解決できなかったものを工業技術センターの力を借りて実現しました。また雌ネジ補強用タングレスインサート挿入工具ではかなりのシェアを得ていますが、これはローテクですが加工はとても難しいものでした。
メーカーから長野県振興公社に打診があってうちでやることになり、中小企業創造活動促進法の第1号でもありました。

 何本もの工具を持つNC機械
  ◆ 何本もの工具を持つNC機械

中村:
社員個々人の力を会社の組織力としてノウハウ化しておられることがキモだと思いますが、一朝一夕ではできないと思います。

中島社長:
品質生産性を維持していくために、わずかづつでも毎日取り組んでいくしかありません。社員教育もOJT(On The Job Training:現場での教育)中心で行っています。
人材教育はとても難しいです。ここまで自動化などをやってこれたのは40年かかって自分が1からすべてやってきたからです。その中でいろんな失敗もしてきました。
失敗しなければ人は育たないともいいますが、厳しい言い方ですが、失敗しなきゃわからないのであればサルと同じです。また1からすべてさせないといけないのか、と。

先人が失敗したことを学んで同じ失敗はしないようにするのが人間です。昔はある取引先を失注してもまた別の取引先があって他に転換しやすかった。今は仕事が少ない中、お金が足りない中でやっていかないといけないのでとても厳しいです。
よく他社さんから社内の自動化を進めたいから相談に乗って欲しいと言われることがあります。その時にこう質問します。
まず、自動化の基本構想はあるのですか?あるとしたら図面にはなっていますか?図面があればそれを部品に分解できていますか?その部品は購入できるものですか?ただ単に自動化といっても機械を買ってきて据え付ければいいものではありません。

その会社が何を目指しているのか、その会社の現状をきちんと把握しているのか、まずそういった足下のことが大切です。在庫管理にしても、出庫は売上につながるのでどこの会社も割合きちんと管理していますが、今何が何個できているかの日々の生産管理は手薄です。
この状態だと在庫がマイナスで出庫をしてる状態になりかねません。これからの課題としては、①どんどん進む多品種少量生産への対応、②少子高齢化対応、です。
 

ハイテク武装の武器を持つ

中村:
今後の展望をお聞かせください。

中島社長:
私が尊敬する経営者からこう言われたことがあります。社長がいろんな行動をするのに使われた時間は最後は試算表に表れないといけないよ、と。「時は金なり」といいますが、使った時間が財務諸表にお金となってあらわれないといけないってことです。打合せをして同じ答えを出すのに、30分かかるのと1時間かかるのとでは倍違います。
会社の実力を例えていえば、最低ラインは決算が終わって税理士から財務諸表を見せてもらって、この1年儲けてきたかどうかがわかる会社です。次にいい会社は、月次決算でわかる会社です。目指しているのは、来月儲かるか儲からないかがわかる会社です。来月のことがわかれば早く手を打つことができます。

先端業界は変化が激しく儲けにくいと思います。中小製造業はローテクに従事すべきだと思います。私たち金属加工業なんてローテクですよ。とはいっても、企業競争の激しい時代ですので、最新の設備と管理手法を用いてハイテク武装しないといけません。ロボット化も必要な人材が減っていくことへの対応ですし、最新の管理手法は先手先手を打つためです。いい武器がないと戦えません。

中村:
最後に塩尻の商工業についての想いをお聞かせください。

中島社長:
塩尻は人のつながりがあってとてもいいところです。都会で情報を仕入れたり、営業は都会に持って行って、田舎でものを作るのはいいのかもしれませんね。繰り返しになりますが、うちみたいなローテクな金属加工業といえども、最新の設備と管理手法で武装してもの作りを行っていかないと生き残っていけません。

KEN'S EYE

中島社長と撮影

meetup!@biz経営者インタビュー、第1回はいかがでしたでしょうか?中島社長のことはお会いする前に物静かだが秘めたものをもたれている方だとお聴きしていました。
実際にお話しを伺ってまさにその通り、温厚で控えめな中に独自の経営理念や自社の強みに関するお考えがみえました。最初にお聞かせいただいた3つの方針は、後になって縣陵三大精神とわかり中島社長の実直さを再認識しましたし、工場内を見学させていただいた際の社員さんの気持ちよいあいさつも社長の経営指針があらわれているものと感じます。
「ああ話したけど、うちがすべて出来てるってことじゃないよ」最後に中島社長はご謙遜されましたが、今風の表面上の派手さはありませんが日々の仕事を丁寧にこなして個々人の強みを会社の強み=組織資産として蓄え半歩先を行くという見えざる強みがあると感じますまさに質実剛健な会社の姿勢に襟を正す思いでした。
【インタビューアー:中村 剣(中小企業診断士)】

※meetup!@biz 経営者インタビューとは

世の中がデフレや不景気とはいっても、塩尻には古くからの伝統ある企業や元気ある企業が多数存在しています。経営者インタビューにより、活力ある企業の先輩経営者の経験をまさに身近な「生きた教科書」として共有・学習することで、未来を展望し塩尻の商工業振興に寄与することを目指すものです。

meetup!@塩尻 https://www.facebook.com/meetupnagano

                       http://meetup.doorkeeper.jp/

お問合せ先:中村剣 http://www3.myfloater.net/

塩尻市協働のまちづくり基金・塩尻市まちづくりチャレンジ事業補助金活用事業

赤羽工機有限会社

代表取締役社長:中島芳郎 
業種:金属加工業
電話:0263-52-0996 
設立:塩尻市大門868番地31にて 昭和32年2月個人企業3社にて合併設立
昭和53年1月 代表取締役に就任 
昭和54年6月 塩尻市広丘野村61-3に移転
平成24年8月 塩尻市広丘野村1787番地32へ移転現在に至る
赤羽工機は、多品種、小ロット、難削材加工、短納期を掲げる精密機械金属部品加工を得意とする企業です。
創業以来45年の歴史を誇り、手狭になった工場を現住所へ移転したばかりです。
経営者インタビューPDF版

 

 

▲トップへ戻る