企業紹介

株式会社マイクロネット

2014年8月26日

株式会社マイクロネット

技術者社長だからこそのハードとソフトの一体開発

浜 三弘社長インタビュー

中村:
本日はお忙しいところありがとうございます。マイクロネット様は本社が川崎ですが、ここ塩尻に信州事業所・システム開発センターを構えられています。

浜社長:
はい、マイクロネットの前身にはマイクロデバイスという会社がありました。前社長が塩尻のプリンターメーカーとのお付き合いがあり塩尻に事業所を設けていました。
マイクロデバイスのコンピューター関係を分社化して平成2年7月に設立したのがマイクロネットになります。もともと塩尻ではコンピューター関連の仕事を行っていましたので、そのままマイクロネットのソフトウェア・ハードウェアの設計・開発拠点となっています。

中村:
浜社長のご経歴をみますと若い頃からコンピューターにご興味がおありだったみたいですね。

浜社長:
昔の話になりますが、まだパソコンが無かった時代、そうワンボードマイコン(注1※)とかの時ですかね。コンピューターがどうしても欲しかったんですよ。当時、ミニコンというものが250万円でした。給料が10万円なのでとても買えるものではありません。そこで自分で作ろうと思い立ったのです。
秋葉原まで通って、トランジスタを1000個買ってきて自分で作りました。ちょっとしたプログラムしか動きませんが、確かに加減算ができ、確かめることができました。またワンボードマイコンのTK80(注2※)が出たときも買わずに自分で設計して自作したものでBASIC(注3※)アセンブラ(注4※)で遊んでいました。

注1:むき出しの一枚(ワン)のプリント基板(ボード)の上に、電子部品と最低限の入出力装置を付けただけの簡素なマイクロコンピューター
注2:日本電気(NEC)の半導体事業部(現在のルネサス エレクトロニクス)が1976年に発売した、マイクロコンピューターシステム開発のためのトレーニングキット
注3:手続き型プログラミング言語のひとつ。
注4:アセンブリ言語(0と1で構成される機械語を人間に理解できるように表現した英数字)のソースコードを、コンピューターが解釈できる機械語のプログラムに変換するソフトウェア

中村:
すごいですね。私が初めてパソコンを触ったのがMZ-80(注5※)の頃なのでその5~6年前ですね。

浜社長:
MZ-80はシャープですね。私はNECのPC-8001から9801を使っていました。当時は岡谷の工場で働いていまして、それこそ様々な開発をやっていました。
日立さんがまだオーディオ事業をやっていた頃なので、カラオケ機器を作ったり、メロディカードを作ったり、ソフトとハード両方やっていましたね。製造ラインの検査の仕組みを作る際も、それまでは基板に電子部品がきちんと刺さっているかを目視でやっていたものを自動化しました。
これもソフトだけで無くハードウェアとの組み合わせで作ったものです。量産品に携われたので、市場へ出るまでの厳しさを体験できましたし、自分が設計した製品が市場に出る喜びも体験することができました。

中村:
昔からソフトだけでなく、ハードウェアも一緒にやってこられた浜社長の経験が、今のマイクロネット様の特徴であるハードウェアからソフトウェアまでのトータルなシステム開発の原点なのですね。

浜社長:
ハードウェアがわからないとソフトウェアが書けません。ハードをきちんとやっているとソフトウェアもわかります。ハードウェアもアナログ部分がわかっていると応用が利きやすいのです。アナログというと古いイメージがありますが、今流行りのセンサーだって人間だってアナログでしょ。このアナログ技術が当社が取り組んでいるANCにも大切なのです。

注5:シャープのMZシリーズに属する1978年に発売された8ビットパーソナルコンピューターのシリーズ


教育ソフト「IS Book」シリーズの誕生

「IS Book」シリーズ
◆ 「IS Book」シリーズ

中村:
マイクロネット様はシステム開発が主業務ですが、教育用ソフトを手がけてられている珍しい企業です。どのような経緯で教育用ソフトを扱うようになったのですか。

浜社長:
当社は電機系エンジニアのための教育用ソフトとして「IS Book」シリーズというシミュレーター内蔵の参考書ソフトを販売しています。ただ参考書を読むだけではなく、シミュレーター機能を内蔵しておりますので直感的な回路動作の理解に役立ちます。
これももともとは私が趣味で作ったものなのです。当時、既存の電気回路シミュレーターはあったのですが、高価でしたし使いにくかった。これなら自分で作っちゃえってことで本を買いあさって休日趣味で作り始めたものなのです。

中村:
浜社長は何でも自作されちゃいますねぇ。(笑)

 「IS Book」内容
     ◆「IS Book」画面

浜社長:
まずはMS-DOS上のシミュレーションソフトとして作りました。Windows3.0から3.1になりかなり使い易くなってきたので社内でWindows用ソフトの勉強会をやったのです。しかし2ヶ月経ってもウィンドウすら表示できませんでした。そこでBorland製の開発環境を買って試したらあっさりウィンドウが表示できました。
なら、このウィンドウ上で回路シミュレーターを動かそうとMS-DOSで動いていたソフトを1年くらいかけてWindows用に作り直しました。このソフトにかっこいいアイコンを作ってもらって見てくれを良くしたら、これは売れるかもしれないって気がして、前社長に販売したいと相談しました。

前社長からこんなの売れるはずがないって言われましたが、別段費用がかかるわけでもないので許可をもらいました。nifty(ニフティ)のフォーラムに掲載するとみるみるダウンロード数が増えていって売れ始めました。使い易かったことがよかったのでしょう。
専門学校や大学からも引き合いがきました。この最初のシミュレーターにその使い方や電気回路の動きの説明を加えたもの、これが今の「IS Book」の前身になります。東京電機大学の三谷教授との出会いも大きかったです。
先生がわざわざ訪ねてみえられました。今では大学での授業に使っていただいたり、「IS Book」の執筆にも関わっていただいたり、分かりやすい解説や新機能のデバッグにもご協力をいただいています。学生用にと価格を抑えたのですが、大学生は買ってくれませんねぇ(笑)。

日本では学生の理系離れが問題になっていますが、小さい子供たちに科学のおもしろさを伝えたい。教育はとても重要です。しかし、どれだけの市場があって伸びるかはビジネスとしては難しいのですが少しでも貢献できたらと思っています。
テレビがアナログからデジタル化したことで、誰でも部品を組み合わせればそこそこのものを作れるようになり、日本のテレビ産業が衰退してしまいました。アナログの時代は調整が難しく、それが日本のお家芸でした。シミュレーターを使うことで電気の波長のアナログな動きを体験してもらうとともに、デジタルによる仕組みを考える力をはぐくんでいってもらいたい。
そこに日本が生き残っていく場があると思っています。この「IS Book」ではコンテンツ+シミュレーターの組み合わせで特許も取得しました。教育ソフトは当社の特徴の1つとしてこれからもやっていきたいですし、新しいものを出していきたいですね。
 

音で音が消える!?

ANCの原理
◆ ANCの原理

中村: 
現在マイクロネット様が注力しておられる技術開発についてお聞かせ願えますか?

浜社長:
現在当社が力を入れているのがANCというものです。ANCとはActive Noise Control(アクティブノイズコントロール)の略でした、簡単に言えば音で音を消す技術になります。音は波形です。騒音となっている音の波形と逆の波形を出してぶつけることで波が打ち消し合うことが原理です。水面で両岸から波を起こして、波がぶつかって消えることありますよね、あれと同じです。専門的には、騒音と逆位相の波をぶつけて音を消す仕組みになります。
はい、そう、もう20年近くになります。1993年に、自動車メーカーから車のエアーフィルターの吸気音を小さくできないかと相談がありました。通常はエアーフィルターの前にレゾネーターと呼ばれる空気室を設けて吸気音を小さくします。それをANCを用いて小さくできないかということでした。まぁできるだろうと思って「できます!」って返事しちゃったんですよ。

中村:
え(笑)大丈夫だったのですか。

浜社長:
試作に1年くらいかかりました。2mくらいの塩ビのパイプを買ってきて、片方に騒音もう片方に騒音を消す音を出すANCを設置して実験をおこないました。そうしたら逆に音が大きくなったんですよ。逆位相の波をぶつけているのにですよ。

中村:
どうしてなのですか?

浜社長:
もうわかりませんでした。1~2週間悩みになやみました。そしてやっとわかったのが、ミリセカンドレベルでの遅れだったのです。音は1ミリセカンドで約34cm進みます。ANCの回路から電気信号が流れて逆位相の音を出す回路までいくのですが、そこに遅れがあったんです。
電気回路で入り口から信号入れたら出口からすぐに信号が出るって思っていました。まさかそこに遅れが生じているなんて思いもつきませんでした。でも電気信号も入力して出力するまでに遅れがあったのです。その遅れのせいで逆位相の波がずれて音がかえって大きくなっていたのです。

浜社長:
もうこれを解決したときは、「やったぁ~!」って感じですよ。ず~と悩んでいたものが解決した瞬間、もう技術者としての喜びですよね。今は社長をやっていますので、目先のお金も大事なのですが、やはり技術者として難題を達成したときの喜び、これはお金とは比較できません。この達成感を社員にも味わってもらいたいですね。

中村:
そうですね。上手くできなかったコトを解決したときの喜び、それが人を成長させるきっかけにもなります。20年来取り組んでおられるANCの現在はいかがなものでしょうか。

浜社長:
2002年にANC評価装置を開発しまして、2005年に東京工科大学へ納入しました。現在、展示会などに出展しているのですが、さまざまな業種の方からお声をかけていただいています。
プレス工場などではプレス音が大きいため、そこで働く工員さんの頭上にANCを置くことで騒音を抑制したり、プロジェクターのファンの音を小さくしたり、パチンコ屋さんでの利用など、音で困られている会社がたくさんあることがわかりました。
しかしながらANCは理論的には確立しているのですが、なかなか実用化まではいたりませんでした。当社では国の助成金をいただきANCのコアとなるデジタル信号処理などの研究開発を進めています。

ANC評価装置
◆ ANC評価装置
 

打てば響く会社にしたい

中村:
中小企業が研究開発するにあたって助成金の活用は大切です。どのように研究開発されているのですか?

浜社長:
研究開発は、川崎の本社とここ塩尻、そして北海道の室蘭の3拠点で進めています。

中村:
どうして遠い北海道なのですか。

浜社長:
ホームページの会社案内に「打てば響く会社にしていきたい」と掲載しているのですが、室蘭の技術者は当社の卒業生なのです。博士号を持って当社に入社して働いてもらっていたのですが、再び大学で研究したいということで一度退社して研究生活に戻りました。
研究が一段落して、そして再び一緒にやろうということになりました。室蘭からSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)という形で働いてもらっています。
彼にはANCの理論的な部分を詰めてもらっています。毎週Skype(スカイプ)で3拠点ミーティングを行って開発を進めています。理論を確立し、その理論を補完し、実用化を目指しています。

中村:
出戻りってことですか。すごくオープンな会社なのですね。

浜社長:
辞めてさよならではありません。当社を卒業してもパートナーとして一緒に働いていただいている方もいます。当社出身なのでやり方や考え方がわかっており、仕事が進めやすい面もあります。

インタビューの様子
 

社員一人一人との対話による能力育成

中村:
さきほどの「打てば響く会社」もそうですが、新しい研究開発を行うにあたって社員さんの人材育成や能力開発はどのようにされているのですか。受託業務もあり、なかなか日常業務の中だけでは新しい研究は行いにくいと思いますが。

浜社長:
受託業務は品質、納期とも厳守です。これはしっかりやってもらわないといけません。当社の技術者は40名ほどなので、私が個々人の能力をみながら業務を行ってもらっています。
定期的に社員を呼んで話しを聞いています。その社員の好きなことが何かをみて、なるだけそれに合うような仕事をさせて能力を伸ばしていきたいと思っています。好きなことだと困難なことがあっても乗り越えられますから。採用の際もそうです。

これまでの採用面接には全員立ち会ってきたのですが、その時にこんなことを聞くんです。「小さい頃何してたの?何かモノを壊したり、分解して修理したりしたことある?」など。
何かにのめり込んだことのある人、アナログ回路の好きな人、など技術が好きな人を採用しています。中途採用の場合もそうです。「前の会社と比べてうちはどう?」など、社員と直接面談して話すようにしています。

中村:
社長自らが全ての技術者と対話して個々人の個性を生かすように考えられているのですね。うらやましいですね。

浜社長:
今は社長業をやっていますから、経営的には現実の受託開発も大切です。それと同時に先を見据えた技術の蓄積も大切です。
ここ3年は目先のことで必死でしたが、ここにきてようやく先を見ることができるゆとりが出てきました。社内の人材を活用したANCの開発がうまくあたってきたと思います。
個々の技術者を見ながら10年後どうなっているかを考えて、プロジェクトに充てるようにしています。
 

技術者としての喜びを感じてもらいたい

浜社長と撮影

中村:
最後に、これからマイクロネット様が目指す企業像、若い技術者へ期待することなどをお聞かせ願えますか?

浜社長:
大企業が目指す市場と中小企業が目指す市場は違うと思っています。大手でもANCをやられているところはありますが、特徴ある技術を 身につけ当社だからできるものでないと生き残っていくのは難しいでしょう。
当社はソフトとハードの両方を手がけていることに特徴があります。これを生かし、幅広くいろんな経験を積みながら技術蓄積をやっていくことでマイクロネットならでは強みを出して社会に役立っていきたいと思っています。

人材確保も、リーマンショック前は合同説明会に出ても誰一人来ないときもありました。ですがここ最近は結構な数の方に来ていただけるようになりました。
先ほど社員と面談をしているとお話しましたが、若いうち本人は10年後の自分がどうなっているのかあまり考えていません。目の前の研究開発に没頭しています。
だからこそ我々みたいなものが、彼らの10年後を考えて夢や仕事を与えていかないといけないと思います。今携わっている業務で彼が成長しそうなら、それが生かせるプロジェクトに引き抜いたり、合わなそうなら別の活躍の機会を与えたりして技術力を高めていくことで、会社が伸びていくことにつながると思います。
そして何より、ただ給料をもらうために働くのではなく、技術者としてできなかったことができたときの喜びを感じてもらいたいと思っています。
 

KEN'S EYE

マイクロネット様の強さの源泉は根っからの技術者である浜社長が、経営者としてだけでなく技術者としても一人一人の社員との対話を通じてスキルや適正を把握されていることだと思います。「技術者としての喜びを感じて欲しい」とはまさに技術者社長ならではの想いであり、それが社員に伝わっているからこそ、研究開発型企業としてハードとソフトが両輪の強みになっています。今後広く応用されるであろうANC での技術開発に期待が高まります。
【インタビューアー:中村 剣(中小企業診断士)】

※meetup!@biz 経営者インタビューとは

世の中がデフレや不景気とはいっても、塩尻には古くからの伝統ある企業や元気ある企業が多数存在しています。経営者インタビューにより、活力ある企業の先輩経営者の経験をまさに身近な「生きた教科書」として共有・学習することで、未来を展望し塩尻の商工業振興に寄与することを目指すものです。

meetup!@塩尻 https://www.facebook.com/meetupnagano

                       http://meetup.doorkeeper.jp/

お問合せ先:中村剣 http://www3.myfloater.net/

塩尻市協働のまちづくり基金・塩尻市まちづくりチャレンジ事業補助金活用事業

浜 三弘社長

株式会社マイクロネット
信州事業所

代表取締役社長:浜 三弘
業 種:ハード・ソフト・システム開発
所在地 :
長野県塩尻市広丘野村1376-14 
電話:0263-52-8655(代)

株式会社マイクロネット

経営者インタビューPDF版

 

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