企業紹介

株式会社サイベックコーポレーション

2014年8月26日

株式会社サイベックコーポレーション

売上高以上の投資で作った夢工場

平林 巧造社長インタビュー

中村:
日経ものづくり「強い工場アワード」大賞、おめでとうございます。まずはなんといってもその夢工場についてお聞かせください。売上げ20億円に対してその9割の18億円の投資とはすごいですね。

平林社長:
ありがとうございます。実はあの投資額は間違っているんですよ。実は28億円、売上高の9割なんかじゃなくて1.4倍なんです。

中村:
9割でも多いのに売上げ以上とはすごい投資ですよね。社内への説明とかはどうなされたんですか?

平林社長:
夢工場については、その投資金額よりも、これから自分たちが何をやっていくのかを中心に話し合いました。現在の工場は前経営者の父が残した夢舞台です。
今後の私たちの新しい夢舞台が今回の投資なんです。基本的なコンセプトは私が作り、あらかじめ社員に話しました。そのコンセプトは、「ものづくりの楽園、ものづくりパラダイス」です。
ものづくりの原点である楽しいものづくりを目指しました。その上で、新しい若手のメンバーでどれだけのものをこれからやっていくのか、アイディアを出し合って社員みんなで作ったのが夢工場です。

中村:
とはいってもあの投資額は最初から回収可能との計算をされていたのですか?

平林社長:
はい、もちろんです。夢工場は、私が社長に就任した2年後の2010年の後半くらいから構想に着手しました。工作機械のヤマザキマザックの工場を設計した設計士さんと1年に亘り検討を行いました。
各種雑誌でも報道されていますが、地下工場にするメリットとして1年にわたって気温変化の少ない恒温環境を実現することができます。ここ塩尻は夏と冬の寒暖の差が40度近くあります。それを20度に抑えることで空調の負荷を大きく削減することができます。
計算上半分になるんですね。設計士さんの計算によると11.4年での回収が可能とでました。実際、毎月の電気料金を測定していますが、ほぼ計算通りで推移しています。あとは、これから先、私たちがこの夢工場で何をやっていくかが大切です。
 

強みのCFP工法

平林 巧造社長インタビュー2

中村:
サイベックさんの強みは、CFP工法(注1※)ですが、この技術確立までの経緯はどういったものですか?1990年代に光ピックアップ(注2※)の製造を従来の焼結加工(注3※)からプレスに置き換えたのが始まりとお聞きしています。

平林社長:
CFP工法といってもその時代、その時代で違うんです。進化しています。 90年代の光ピックアップで使ったCFP工法はCFP工法の原点となるものですね。
90年代、電気関連から始まったCFP工法ですが、その後、プリンターのアマチュア(注4※)などにも応用していきました。 しかし、電気関連は急速な海外シフト、コモディティ化が進んでいきます。
そこで当社は自動車部品関連に目を付け、CFP工法も自動車用に近代化していきました。 当時、海外進出の打診も受けましたが弊社みたいに小さな企業は、海外進出するとなると国内工場との二足のわらじになりとてもやっていけません。
高付加価値なものづくりは実現できません。 そこで、光ピックアップなどの電気系のCFP工法は現地企業に技術供与して、そこで得たライセンシーを自動車用の技術開発に投資していきました。

注1:CFP工法(Cold Forging Progressive:冷間鍛造順送プレス):金属素材を室温で、金型を用いて圧縮成型する技術。
   通常は昔の刀鍛冶のように金属を高温に熱してから処理を行う。
注2:CDやDVDなどの光学ドライブでデータの読み書きを行うためのレーザー部品。
注3:材料の粉末に圧力を加えながら溶け出すよりも低い温度で加熱して一体化する加工技術。
注4:モーター部品の回転する部分。

中村:
なるほど、一般的になりコストに合わなくなった技術は海外企業に供与し、それで得た資金を新規事業に生かされたんですね。そもそもなぜ、自動車業界だったんですか?

平林社長:
自動車部品も少なからずやってはいたのですが、売上高の2割はいっていませんでした。きっかけは、先代社長が行ったCFP工法についての講演を某自動車部品メーカーのトップの方がお聞きになられたことです。先代社長とその方が意気投合し、ぜひCFP工法を自動車でも使いたいという強いオファーでお取り引きが始まりました。
某メーカーさんとお取り引きをするということは、その先に大手自動車メーカーへの展開が待っており、急速に自動車関連部品にシフトしていきました。今では自動車関連部品が売上げの8割を占めるまでになっています。
 

イノベーションを起こす環境づくり

平林 巧造社長インタビュー3

中村:
CFP工法の強みを維持していくための取り組みについてお聞かせください。

平林社長:
電気系でやっていた原点であるCFP工法と今の自動車でやっているCFP工法とでは、その作る部品の大きさが全然違います。小さな部品を精度よく作ることは割合容易ですが、大きな部品を高精度で作ることはとても困難です。
そのためには、イノベーションが必要で、イノベーションには人が最重要です。しかし、人だけではイノベーションは起こしにくく、イノベーションを起こしやすい環境づくりが大事になってきます。そのためには、何と言っても人材育成が必要ですし、自分たちだけでなくお客様の声をヒントにしないといけません。

人材育成については、如何に若いうちに経験を積ませるかだと思っています。1つの取り組みとしては、2010年からやっています、「ものづくり未来塾」があります。「ものづくり未来塾」は、創業者が講師になってものづくりの原理原則を若手社員に教えることで技術の継承をはかっています。
もう1つは、イノベーションをどう起こさせるかです。イノベーションは、人から生まれるもので、夢やロマンがないと生まれませんし、お客様からのヒントや社員自身が新しいものにチャレンジしていかないと生まれてきません。それは日常業務だけでは難しいものです。

そこで、「職務開発制度」というものを設けています。社員がやりたいことを形にするきっかけを与える制度です。基本的な技術の方向性は私が示しますが、それにさえ合っていれば予算をとって日常業務とは別に自由に取り組んでもらいます。
そのための残業代も会社が出します。日常業務に余裕があればその時間にあてても構いません。考えるだけでなく、アクションを起こす場を与えることです。
昔のうちの会社はひどかったんです。失敗だらけでした。失敗したのを自分でなんとか見繕ってばれないようにしたりしていました。

しかし残念ながら、今は失敗ができない環境です。それだけ改善が進み、会社としては良いのですが、それでは反対にイノベーションが起きにくい環境になっています。
「職務開発制度」は自分からやると手を挙げてやっている研究です。社員は死にものぐるいで取り組みます。例えうまくいかなくともその経験から学ぶ教訓をどう生かし成長していくか、とても大切な機会だと思います。問題解決型の人材の育成、それが1番の狙いです。
 

巧妙に仕組まれた?事業承継

中村:
社長は29歳の時に事業承継されていますが、これは先代社長が創業なされた29歳と同じです。これには意図があったのですか。

平林社長:
いえいえ、それはないと思いますが、今にして思えば先代から仕組まれたものかもしれませんね(笑)。もともと私は先代の会社で働く気はさらさらありませんでした。大学卒業後に海外に出たくてその資金稼ぎで、4ヶ月間アルバイトとしてこの会社で働かせてもらいました。
そのアルバイトの4ヶ月間、製造、設計、企画など事細かに仕事をさせられました。これはインターンシップとして父が仕組んだものかもしれませんね(笑)。その後、カナダに1年間留学します。
アメリカンドリームを夢見ていたのですが、環境に慣れてくると刺激が少なくなってきました。そのときに日本の父の会社で過ごさせてもらった4か月間が思い出され、充実した刺激に満ちた時間と父の会社のすごさを実感しました。そして帰国後働かせてくれとお願いして入社しました。それが2004年です。

その2004年に先代社長が、5年後に引退すると宣言したんです。金型業界では60すぎても現役社長はたくさんいます。業界に驚きが走りましたね。もちろん、私にも経営を受け継ぐ意思はありましたが、明確に次を誰にするのかは決まっていませんでした。
5年という時間があったおかげで、社員に考える余裕を与えことになりますし、次が誰かを見定めることもできたと思います。このことが結果的に事業承継がスムースにいったのではないかと思います。本当に先代はすごいと思っています。
 

社員は家族

社員が全面に出た会社案内
◆ 社員が全面に出た会社案内

中村:
MITサロン(塩尻市インキュベーションプラザSIPで行われている製造業の勉強会)でもお話されていましたが、サイベック様は社員に対する福利厚生が充実されています。先日は、障害者技能競技大会アビリンピックで製品パッキングで銀賞をとらていましたね。

平林社長:
ありがとうございます。アビリンピックは小林くんのことですね。福利厚生について言えば、まずは創業からの理念として「社員は家族」というものがあります。
会社の競争環境が変わっていくにつれて技術等は変えていく必要はありますが、「社員は家族」の理念は変えてはいけないものと思っています。家庭の安心と会社の安心がなければ、いい仕事はできません。
当社の制度としては、育児休暇を1年から3年に延ばしましたし、ノー残業デーやアニバーサリー休暇もあります。面白いところでは、「スペシャルサンクス賞与」と「有給シェアリング」があります。

アビリンピックで銀賞を受賞した小林さん
     ◆ アビリンピックで銀賞を受賞した小林さん

スペシャルサンクス賞与」とは、社員の家族にあげる賞与です。毎日、元気にお父さんを会社に送り出してくれている奥さんに贈るものです。「有給シェアリング」は、社員が自分の使わない有給を他の社員のために供与するものです。
以前、心臓に病のある社員がいて手術のために入退院を繰り返して有給も消化してしまいました。そうなると欠勤になってしまいます。そこで、例えば社員は74人いるのですが、それぞれが消化しない有給を彼のためにシェアすれば70日もの休みがとれることになります。
まさに「社員は家族」の精神なんです。今では心臓に病のあった社員も完治して、みんなに恩返しをしなきゃとがんばって働いています。
 

今後の事業の展開と夢

「夢」の前で
◆ 「夢」の前で

中村:
2013年9月に医療機器製造業許可証を取得されていますね。

平林社長:
今は自動車関連が売上げの8割を占めていますが、これがいつまで続くかはわかりません。先代が電気部品から自動車部品へ舵を切ったように、今のうちから新しい分野の準備をしないといけません。
全くの新しい分野ではなく私たちの既存技術が生かせる分野がないか、探してきました。そして医療分野にたどり着きました。今年から生産を始める予定です。
 

中村: 
すでに次の成長分野にも着手されているんですね。最後にこれからのサイベック様の夢をお聞かせください。

平林社長:
経営者として、社員を信頼しないといけないと思いますし、社員から信頼される経営者でないといけないと思います。お互いが信頼しあえる仲間にならないと。
そして、夢工場がそうですが、楽しいものづくり、社員が楽しみながら仕事をしていく環境づくりです。 会社が安定することで、社員の家庭も安定し、いい仕事ができる。
そして、社員の子供がサイベックに入社してくれるような会社にしたいですね。 そうなれば、サイベックのDNAを受け継ぐ社員が入社することになるのでリクルート活動も必要ありません。(笑)
当社の会社案内を見てもらうとわかるのですが、技術紹介は紙のペラ1枚で後は社員の顔を全面に出したものになっています。 当社にとって、人が最大のブランドであり商品です。それが私の目指す、ジャパンドリームです。
 

KEN'S EYE

日経ものづくりで紹介もされ最近メディアで報道される機会の多いサイベック様ですが、今回のインタビューでは「夢工場」そのものではなく、その投資に至った経緯やイノベーションに対する取り組みにフォーカスを当ててお話しをお伺いしました。
平林社長はまだ33歳とお若いですが、先代からしっかりと経営理念を引継ぎ、自分たちの次の舞台である「夢工場」をつくられました。
「職務開発制度」でのイノベーションの誘発、「社員は家族」を具現化した「有休シェアリング」、「スペシャルサンクス賞与」などの話は心が温かくなります。平林社長からお話を伺って、すっかりサイベック様のファンになってしまいました。
【インタビューアー:中村 剣(中小企業診断士)】
 

「夢工場」工場見学

夢工場は本社敷地の北側にあり、その入り口には平林社長自らが書いた「夢」の文字が飾られています。普段は貨物用に使っているエレベーターで地階に降りると、そこは全面真っ白な空間。研究所もしくは半導体工場といったもので、とても金型工場とは思えないものです。
Aラボ、Bラボ、Cラボと大きく3つの部屋に分かれており、それぞれ切削、研削、放電加工を行っています。Aラボにはメーカーと開発した日本に1台しかない工作機械が設置されており、恒温、低振動環境でないと発揮できない超高精度の金型加工を行っています。

夢工場の入口
◆ 夢工場の入口 

貨物搬出用エレベーターで地階へ
  ◆ 貨物搬出用エレベーターで地階へ

そこはまるで秘密研究所
◆ そこはまるで秘密研究所

地元の中学校バレーボール大会用の優勝カップ。サイベックの超高精度加工技術でつくられている
◆ 地元の中学校バレーボール大会用の優勝カップ。
  サイベックの超高精度加工技術でつくられている

ワイヤー放電加工機
◆ ワイヤー放電加工機

これまた超精密の将棋盤。碁盤はそれぞれ独立した立方体でつくられており、それを組み合わせている
 ◆ これまた超精密の将棋盤。
   碁盤はそれぞれ独立した立方体でつくられて
                                                             おり、それを組み合わせている

Aラボにある日本に1台しかない工作機械
◆ Aラボにある日本に1台しかない工作機械

 

※meetup!@biz 経営者インタビューとは

世の中がデフレや不景気とはいっても、塩尻には古くからの伝統ある企業や元気ある企業が多数存在しています。経営者インタビューにより、活力ある企業の先輩経営者の経験をまさに身近な「生きた教科書」として共有・学習することで、未来を展望し塩尻の商工業振興に寄与することを目指すものです。

meetup!@塩尻 https://www.facebook.com/meetupnagano

                       http://meetup.doorkeeper.jp/

お問合せ先:中村剣 http://www3.myfloater.net/

塩尻市協働のまちづくり基金・塩尻市まちづくりチャレンジ事業補助金活用事業

平林 巧造社長

株式会社サイベックコーポレーション

代表取締役社長:平林 巧造
業種:金属加工業
所在地    [本社・工場]
〒399-0704 長野県塩尻市広丘郷原南原1000-15
電話:0263-51-1800(代表)
FAX: 0263-51-1808(代表)

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